事務所ブログ

2015年2月16日 月曜日

子供や孫への贈与について

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。

突然ですが皆さん、法律上「贈与」とされるために必要な条件って分かりますか?
私は、法律の勉強をするまでは分かりませんでした。


○贈与契約
贈与というのは、民法にしっかりと記載されている「契約」の一種です。
民法第549条によると、『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。』というものです。
つまり、
①自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示
②相手方が受諾
という二つの要素で成り立っています。どちらが欠けても法律上贈与ではないということになってしまいます。


○子供や孫名義の口座への入金
お母さんお父さんが、子供のためにと子供名義の口座に少しずつお金を入れている。
おじいちゃんおばあちゃんが、孫のためにと孫名義の口座に少しずつお金を入れている。

このような場合に、もしその口座の通帳やキャッシュカードをお父さんお母さんやおじいちゃんおばあちゃんが持っていた場合、贈与と見ることは非常に困難です。
それは、子供がいつ誰からどれだけの金額を貰ったか認識していないため、上に書いた②相手方の受諾が成立する余地がないためです。

贈与したはずが贈与ではないということになった場合、どうなるでしょうか。
法律的には財産権が移動していないことになるため、お父さんお父さん(またはおじいちゃんおばあちゃん)の財産から出ていっていないということになり、相続財産の一部と扱われます。

相続財産の一部となるため、遺産分割協議の対象となり、相続税を計算するにあたっても含まれることとなり、子供のためにと入れていたお金がその子供のところへ行かなくなってしまう可能性があるのです。
子供名義の口座にお金を入れていた方には、その方の思いがあってそうしていたはずです。
些細な形式的な問題でその思いが裏切られるようなことがあってはいけないと思います。法律が悪いといえば法律が悪いのですが、現在の法律がそうなっている以上、それを前提に対処していくことを考えていかなければなりません。

毎回きちんと贈与契約書を作成する。毎回が面倒であれば年一回まとめる形でもいいだろうと思います。
また、通帳やキャッシュカードの管理についても子供に任せておくことも必要です。

しっかりと贈与としての形を整えれば、相続税はかからず、年に110万円までであれば贈与税も掛からないことになります。相続財産の一部と扱われることもありません。
思いをしっかり子供や孫に伝えるためにも、法律的な手当はしっかりとしていきたいものです。

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2015年1月28日 水曜日

刑事事件 少年犯罪と成人の犯罪

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。
こんにちは。

この1月は、新年早々から刑事事件の取り扱いが立て続けにありました。
少年事件もあれば、成年の事件もあり、もりだくさんの一か月です。

少年犯罪は、成年による犯罪の場合とは異なった進行をします。
普通、成年による犯罪は、
①逮捕 → ②検察官送致 → ③勾留 → ④起訴or不起訴 → ⑤刑事裁判
という流れで進みます。

事件は警察官が容疑者を逮捕してから急速に進行します。
まずは検察官送致です。これは一般に「送検」と言われています。容疑者が逮捕されている場合には、身柄を検察庁に持って行きます。送検を受けた検察官は、容疑者を取り調べ、勾留を請求するかどうかを判断します。
検察官が容疑者を勾留すべきだと判断した場合、裁判所に勾留請求を行います。請求を受けた裁判所は容疑者に質問をし、勾留すべきかどうか判断し、勾留すべきだという判断になれば容疑者を勾留します。
この勾留は、原則10日間とされていますが、20日まで延長される場合があります。
この勾留の間に検察は容疑者を取り調べ、容疑者を起訴するかどうかを決断します。起訴された場合にはその後は被告人として身柄拘束が継続するのが通常です。起訴されない場合には、もちろん釈放されます。

ところが、少年事件の場合には、そうはいきません。
少年は、いまだ心身が未熟であることから、今後犯罪をくりかえさないよう更正させることを目的として少年法が特別な手続きを定めているのです。
①逮捕 → ②検察官送致 → ③勾留
までは同じですが、この後検察官は必ず事件を家庭裁判所に送らなければなりません。その後は、
④家裁送致 → ⑤観護措置or審判
となるのです。
この段階では、観護措置となる場合が多いです。
観護措置とは、少年を少年鑑別所に入れ、少年の心身の状況を観るためのものです。期間としては4週間弱となることがほとんどです。
これは、成年と比べて少年の場合は4週間長く身柄の拘束が続くことになるということです。
この4週間の後、少年はいよいよ最終的な結論(審判)となります。
審判では、少年を検察官送致、少年院その他の施設への送致、保護観察、のどの処分にするかが決定されます。
ここでの検察官送致は、一般に「逆送」と呼ばれています。
「逆送」は家庭裁判所が少年を青年と同じ刑事事件で裁くべきと考えた場合になされ、検察官は必ず少年を起訴しなければなりません。
少年院その他の施設への送致は言葉の通りです。
保護観察は、身柄拘束を解かれ、保護観察官の監督のもと、社会で生活していく中で更正を図っていくというものです。
最終的にどの処分になるかは、少年が犯した罪の重さだけでなく、少年の家族や周囲の環境にもよって、「どうすれば少年がしっかり更正できるか」という観点から行われます。

この1月は、この少年事件と成年の事件と両方をさせていただくことになりました。

少年事件では、何度も鑑別所に足を運びました。鑑別所が八王子にあるので、私の事務所からは片道で2時間かかってしまいますが、少年に会わなければ何もできませんから、なんとか時間を作って面会に行っていました。両親とも連絡を取り、審判に向けて報告書を作成してもらうといったことも行いました。
この事件は、なんとしても保護観察で終わらせなければならない事件でした。少年は大学生であり、少年院などに送致ということになれば退学は免れず、将来に大きな禍根を残してしまうからです。
被害者との示談を試みるも、連絡を取ることさえ拒まれる状況で、決して安心できるものではありませんでした。家庭裁判所に送られた時の検察官の意見も、少年院への送致とされていました。
少年からこれまでの生活の状況を聞いて更正への道のりを考えながら、事件を繰り返さないようにするにはどうしたらいいか、少年と一緒に少しづつ考えていきました。大学生ともなればほぼ一人前の大人です。しっかりと彼の意見をくみ取りながら話を進めていかなくてはいけません。

観護措置の期間中に家庭裁判所の調査官や担当の裁判官と話をし保護観察にすべきということを継続的に伝えていきました。最終的には、保護観察とすべきという意見書も作成し、裁判所に提出しました。
我々弁護士の間では、審判前の活動で審判の結論が決まると言われています。審判のその日には、裁判官は既にすべての記録に目を通し、家庭裁判所調査官の報告や、少年鑑別所からの報告、弁護士からの意見書をすべて目を通して結論を描きおわっているからです。そうでなければ当日の思い付きで審判がされることになりかねませんから、当然のことではあります。

結果は保護観察。少年はその場で身柄釈放を解かれ、審判に出席したご両親と一緒に帰ることができました。片道2時間、往復4時間の苦労が報われる瞬間です。


一方の成年の事件です。
普通のまじめな会社員でした。そもそも身柄を拘束する必要がないのではないかと思われるような事件でした。
このような事件では、直ちに身柄拘束を解くべく勾留取り消しを求めていくか、勾留が延長されないよう活動していくかのどちらかになります。
今回のケースでは、初めて面会した時点ですでに勾留がなされていたため、勾留の延長を防ぎ10日で釈放となることを主眼に活動を展開していきました。勾留の取り消しを求めていくことも考え勾留理由開示の請求もしたのですが、休日の関係で勾留満期日近くでないと期日が開けなかったため、延長を防ぎ釈放させるということをメインに据えることになったのです。
幸い、突然の逮捕勾留にもかかわらず、会社には全面的なバックアップを約束していただくことができました。
そのような状況であったため、検察官に対しては、まずは対決姿勢ではなく紳士的に対応しある意味協力していくような方向を取ることにしました。そして検察官が身柄拘束をどのように考えているのか聞き、勾留した狙いを聞き出すことができました。
勾留は法律上は証拠隠滅や逃亡のおそれなどの理由があるときにできることになっていますが、そこに繋がると思われている理由は様々です。ときにはそうした勾留の理由が単なる建前ではないかと思われるときもあります。もちろん検察官はそうは言いませんから、うまく効き方を工夫して匂わせてもわわないといけません。
とはいえ聞けてしまえば、あとはその理由、検察官の懸念を解決するだけです。容疑者の上司の方と連絡を取り、検察官の懸念を解決していくことにしました。幸い困難なことではなかったため、速やかに状況を整えることができました。
その結果を検察官に伝えたところ、検事から「それでは翌日に不起訴とします」という回答を得ることができました。

活動の成果が狙い通りに上がるというのは非常にありがたいことです。

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2014年12月 6日 土曜日

不倫の証拠の強さ

こんにちは!

東京都文京区で弁護士をしております野口眞寿です。

本日は、不倫の証拠としてどのようなものが考えられ、どの程度しょうことして強いのか、についてまとめてみたいと思います。

不倫と一言に行っても、法律上離婚原因になるのは不貞行為があった場合ですので、ここでは不貞行為の証拠としてどのようなものが使えるのか、ということにうちて解説をしていきます。
不貞行為と言うのは配偶者以外の異性と肉体関係を持つことです。
直接現場を押さえられれば言うことはありませんが、そうできることは稀ですので、さまざまな証拠が必要になってきます


不貞行為をされたにもかかわらず裁判で相手が認めず何もできないというのは非常に悔しくないでしょうか?

私もこれまで取り扱った事件で、不貞行為の証拠がないために追及を断念したことがあります。
そうした思いを繰り返さないためにも、しっかりと証拠を手にするという意識を持っていただけたらと思います。

さて、本題です。

1.写真・動画
不貞行為についての写真や動画があればもっとも強いです。

仮にそうしたものがなくても、一緒にホテルなどに入っていく写真で不貞行為を証明することもできます。
探偵の報告書で多いのがこの類の写真です。探偵の場合、ホテルに入った時間と出た時間を写真で記録するので、何時間ホテル内にいたかも立証することができ、非常に強い証拠となります。

2.メールやLINE、SNSなどの文章
写真はない場合でも、メールなどから不倫が発覚することがあります。
こうした不倫相手との文章でのやりとりは、その内容で不貞行為まであったことがうかがえるかどうかが重要になってきます。

そのやり取りの内容から不貞行為、つまり肉体関係があったと推測できるときには、こうしたやり取りによって不貞行為を証明することができます。実際にそうした判決も多く出ています。

3.不貞行為を認める録音
配偶者が口頭で不貞行為を認め、それについて録音できた場合はどうでしょうか。
もし録音がないと「言っていない」と逃げられてしまう可能性がありますが、録音があればそういった逃げ方はできません。

一般的に人間は自分に不利なことは隠そうとします。追求されてもいないのに堂々と「不貞行為をしてきた!」と言う人間はほとんどいません。また、実際は不貞行為がなかったのに不貞行為があったと認める人もほとんどいません。
そうであるからこそ、追求され不貞行為を認めたという発言は、実際に不貞行為があったことを推測させるので、不貞行為を証明することができます。

また、民事裁判はあらゆるものを証拠とすることができるので、相手に録音することを秘密にして録音したものでも全く問題なく証拠とされます。

4.通話履歴
通話履歴に知らない異性の名前があって追求したら、ということもある程度あるだろうと思います。
しかし、通話履歴だけでは、頻繁に電話していた事実までしか立証できず、会っていたことや不貞行為があったことについては分かりません。
そのため、こうしたケースについては3番の録音を組み合わせて証拠とするのが良いです。



これらの証拠のうち写真や動画は入手するために探偵を雇ったりしなければならず大変です。
会話の録音については今の社会ではそう難しくありません。家電量販店で安いICレコーダーを買ってきてもいいですし、スマホにもICレコーダーアプリがあります。
怪しいと思ったら録音の用意をしておき、何事もなかったり誤解であれば録音したものを消せばよいのです。

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2014年11月17日 月曜日

不倫・不貞行為による慰謝料の相場

不貞行為による慰謝料の相場はどの程度でしょうか。

そういった質問をよく受けます。

一般的には、離婚をしないのであれば数十万、離婚をするのであれば200万~300万程度と言われています。

慰謝料額を決める要因は様々ですが、例えば
・不貞行為に至った事情
・同居しているのか、別居しているのか。別居しているのであればその理由
・夫婦関係はどうであったか
などがあるでしょう。

とはいえ、あらゆるケースで200万~300万の幅に収まるわけではありません。
判決を調べてみると、離婚に至ったケースで150万であったり、あるいは500万の支払いを命じた判決もあります。

どのようなケースで相場を下回ったり、上回ったりするのでしょうか。たとえば以下のような場合があります。
○下回る可能性があるケース
・婚姻期間が非常に短い場合
・不貞行為の回数・期間が少ない場合

○上回る場合
・不貞行為の回数・期間が多い場合
・様々な相手と不貞行為を繰り返すなど、特に悪質な場合

慰謝料は、この事情があるからいくら、というように数学的に計算できるものではありません。交渉や調停では、双方金額を主張し合いながら最終的な合意に向けて金額を詰めていくということが行われます。

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2014年7月15日 火曜日

製造物責任法についての概説

東京都文京区の弁護士野口眞寿です。

製造物責任法という法律を聞いたことがある方は多いと思います。PL法という名前で聞いたことがある人も多いかもしれません。
製造物責任法とは,製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めた法律です。その目的は製造物の欠陥によって生じた被害の被害者を保護することにあります(製造物責任法1条参照)。

〇責任を負う者
製造物を製作した者,輸入した者が賠償責任を負います。
消費者の保護を目的としている法律ですから,消費者が製造者と誤認するような記載をしたり,広告などで表示した者もその責任を負います。

〇賠償すべき場合
製造物に「欠陥」があった場合です。
「欠陥」とは,「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いている」ことをいいます。

平成25年には,自転車のサスペンションが走行中に分離したために怪我をしたケースで,自転車に欠陥があったことを認めて約1億5千万円の支払いを命じる判決がでています。(平成25年 3月25日東京地裁判決)
同判決は,自転車のサスペンションが内部のスプリング部分でのみ上下がつながっている構造であり,スプリングが破断すれば上下が分離しうる状態になることを認定し,そうしたことは通常自転車を購入した者の合理的期待に反するものとして,通常有すべき安全性を欠いていたとの判断を下したものです。
製造物責任法が被害者の保護を目的とするものですから,安全性の判断を被害者の目線で行うことは適切なものといえます。


〇対象となる被害
生命,身体,財産に生じた被害が賠償の対象となります。
ただし,財産のうちでも問題となっている製造物に生じた被害は含まれません。

〇無過失責任
製造物責任法による賠償責任は,製造者に過失があることを要求しません。すなわち,製造者がどんなに注意を払っていたとしても「欠陥」があることになれば必ず賠償をしなければならないとされています。
非常に限定的な場合にのみ免責が認められていますが,適用されるケースは事実用ほとんどないと考えてよいでしょう。

〇期間制限
このように重い責任を製造者に追わせることになっているため,製造物を引き渡してから10年が経過した時は損害賠償を請求することが出来ないことになっています。

〇小括
製造物責任法はどんなに注意していたとしても製造者に賠償を命じる点で,消費者にとっては強く保護され,製造者にとっては予期せぬ支払リスクを負っていることになります。
怪我をしたい消費者はいませんし,怪我をさせたい製造者もいません。
製造物責任法は,最終的にしっかりとした安全性を有する製品のみが市場に残るようにし,消費者も製造物を適切に安全に使用するようになることを目指しているように思います。

投稿者 初雁総合法律事務所 | 記事URL

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