事務所ブログ

2016年9月 7日 水曜日

政府が残業規制を強化するということについて

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。

政府が1か月の残業時間に上限を設定する検討に入ったというニュースがありました。
上限を超える残業は原則禁止し、現在はない罰則規定の新設を含め、具体化を図っていこうということのようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160907-00050004-yom-pol

世の中を見通してみると、残業を全くしていない人というのはいないのではないかと思います。
残業代が支払われているかはさておき。

当事務所にも、時折残業代についての相談が寄せられます。
そうした相談を受けていると、様々な点で現在の残業に関係する制度には問題があると思えることが多くあります。

たとえば、時効。
残業代の事項は2年と通常の債権より短く、労働者の権利を守るための労働基準法がかえって労働者の権利を制限しているという皮肉な事態を生じさせています。

たとえば、証明。
残業代を裁判で請求するには、どれだけ残業したかを労働者の側が証明しなければなりません。
退職後にどれだけ働いていたかの資料を労働者が手にすることは不可能です。また、会社としての出退勤の管理が甘く、どれだけ残業したか、資料が全くない場合も存在します。
様々な手を使って立証を試みていきますが、どうにもならないケースというのも残念ながら存在するのです。
本来出退勤時間の管理は雇用者の側の責任であるはずですが、これを怠ることでかえって雇用者が得をするという大きな問題です。

政府にはこのあたりの問題点にもぜひ切り込んでもらいたいと思います。


また、管理監督者、年俸、固定残業代といったワードが残業代を支払わなくていい理由として提示されることがあります。

管理監督者は、課長や係長、部長など管理職である場合に主張されることが多いものです。
ただ、労働法でいう管理監督者とは、
①会社の経営方針や重要事項の決定に参画し、労務管理上の指揮監督権限を有していること
②出退勤等の勤務時間について裁量を有していること
③賃金等について一般の従業員よりもふさわしい待遇がなされていること
が必要であり、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。
「雇用されてるけど、実態は経営者だよね。、だから労働時間による規制はなじまないね」というわけです。
雇用関係もある従業員兼務取締役などがその典型です。

年俸制は、残業代を拒む何の理由にもなりません。
個人事業主である野球選手が年俸で契約するのとは違い、通常の労働者にとって年俸制とは一年に支払われる給与の総額をあらかじめ確定させるにすぎません。
最近売り上げがよくないからボーナスは少なくする、といったことがなくなるというわけです。
ここで固定される金額は、あくまで所定の労働時間に対する対価としての金額です。労働時間の規制には何の影響もなく、当然、残業代を支払う義務が発生します。

固定残業代、低額残業代といったものは、その金額が実際の残業代を超えない限り問題ありません。その場合は適正に残業代が支払われていることになるためです。
ただ、実際に残業した分の残業代の方が高額になった場合には、実際の残業に応じた残業代を支払わなければなりません。
したがって、残業代の支払いを拒む理由にはならないということです。




投稿者 初雁総合法律事務所

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