事務所ブログ

2016年3月21日 月曜日

会社役員の休業損害

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。

交通事故は、だれでも巻き込まれうる恐ろしいものです。
事故に巻き込まれれば、入院した場合はもちろん、そうでなくても通院治療のため仕事を休まなければならないことになります。

会社員であれば、働いていない日の分は給料が出ないことになるため、支払いは受けられるのですが、問題は被害者が会社役員であった場合です。
会社役員が交通事故にあった際休業損害はもらえるのでしょうか。

「会社役員であるから休業損害は発生しない」という主張は、加害者側弁護士の常とう手段です。
では、その主張は実際裁判所はどう考えるのでしょうか。

例えば平成6年22日に千葉地裁は次のような判決文を出しています。
「反訴原告会社は反訴原告織戸の個人会社であり、同反訴原告の職務内容も、受注の際の見積りのほか、ダンプ・重機の運転及び土砂・廃材等の積み降ろし等の肉体労働が多く、右役員報酬はその全額が労務提供の対価と見るべきであり、税務上も給与所得として取り扱われていることが認められる。そうすると、本件事故と相当因果関係のある反訴原告織戸の休業損害は、同年六月から同年八月までの三か月分の右役員報酬合計金三〇〇万円であると認めるべきである」

また、平成13年10月11日に大阪地裁は、特殊な車両の設計・製作技術者として高度な能力を有していた会社役員について、同業務を代替できる社員がいなかったという事情から、役員報酬全額を労務の対価とみるべきであるとして、休業損害の賠償を認めました。

これらの裁判例からすると、裁判所は、労務提供の対価部分については休業損害として認めていることが分かります。役員報酬全てが労務の対価として認められない場合でも、割合的に労務の対価部分を認定し賠償を命じることがあります。

これは、役員報酬には、労務の対価である部分と、会社があげた利益の配当部分があるという理解に基づいています。労務の対価と言うのは、つまりは時間を費やした対価という部分であり、前者の部分については休業による損害があるとして賠償を認めているのです。

つまり、重要なのは、役員として担当していた業務が「労務提供」にあたるのかという点に当たります。
この労務提供には、裁判例上、肉体労働はもちろん、上記の大阪地裁の例のような設計業務のほか、営業業務なども認められています。どのような業務を行っていたかをしっかり裁判所に伝えることが重要です。

投稿者 初雁総合法律事務所

相続相談ガイドに掲載されました
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