事務所ブログ

2014年5月14日 水曜日

交通事故と学費

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。

今日は,まだ就職していない子どもが交通事故にあってしまった場合の学習関係の費用について説明させていただきます。

1.交通事故の損害賠償の原則
日本の裁判所は,賠償されるべき損害の対象について「差額説」の立場をとっています。
差額説というのは「事故がなかったと仮定したときの状態と事故があった現在の状態との差の部分を賠償されるべき」とする考え方です。
ザックリというと,「事故があったせいで追加でかかった費用」と「事故がなければ得られるはずだった収入」とが賠償されることになります。
前者であればその追加費用は必要な追加費用だったのかということが問題になります。
後者であればそれは本当に得られるはずだったのかということが問題になります。

それでは,それぞれの項目について整理していきます。

2.留年の場合の学費
交通事故によるけがの程度によっては,一年間留年することになってしまう場合があります。
留年すればその分学費がかかってしまいます。

この学費については,例えば岡山地方裁判所平成9年5月29日判決において,「入通院のため五ケ月余にわたり大学の講義を受けることができず、単位修得に重大な支障を来し、一年間の留年を余儀なくされたこと」が認定され,一年分の学費97万円が賠償されました。
判決は詳細な検討を加えているわけではありませんが,大学の講義を受けることができないと認められるために怪我の程度や入通院の日数がポイントになるものと思われます。

また,同判決では被害者は大学進学のために親元から離れて一人でアパートに住んでいたところ,留年によって一年多くアパートを借り続けなければならなかったとして,一年分のアパート賃料も賠償されることとなりました。

3.家庭教師への謝礼
交通事故による入通院や後遺症のために学校の勉強についていけなくなり,家庭教師を頼んだ場合には,その謝礼も賠償されることがあります。
大阪高等裁判所平成19年4月26日判決では,交通事故によって高次脳機能障害の後遺症を負った児童が入通院や後遺症の影響で学校の勉強に十分についていけなくなったため,退院から4年6カ月にわたって家庭教師による指導をうけていたケースで,支出した謝礼と教材費について賠償されました。
記憶機能や言語機能,注意機能,空間認識能力など非常に重大な障害を負ってしまったケースですので,ただちにあらゆる場合にあてはまる判決ではないと思いますが,賠償される可能性のある費用ということです。

4.通学付添費用
後遺症によって本人が自力で公共交通機関を使っての通学が困難になってしまったときには,親の通学付添費用の賠償が認められることがあります。
例えば横浜地方裁判所平成11年2月24日の判決ですが,脳挫傷の後遺症をおった高校生の通学付添費用として1年間1日あたり3000円の賠償がされています。

5.最後に
交通事故においては,保険会社が支払を認めなかったからと言って直ちにあきらめる必要はありません。
多くのケースで,裁判所は保険会社と異なる判断をしています。
裁判所で認められる可能性の高い金額はどの程度なのか,それを知るためにも,一度弁護士に相談してみることをお勧めします。自身の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば,自ら費用を支出することなく相談・依頼することができます。
交通事故日関する相談で弁護士を訪問する際は,あらかじめ自身の保険の内容を確認してみてください。



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投稿者 初雁総合法律事務所

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