事務所ブログ
2014年3月12日 水曜日
内視鏡・腹腔鏡に関する医療過誤
東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。
先日、私も所属している医療問題弁護団の集まりがありました。
この弁護団は患者側で医療過誤訴訟をてがける弁護士で構成されています。
今回は弁護団の団員が手がけている事件を今後どう進めていくかという相談や、過去だされた判決の内容を研究しました。
その中で、私も内視鏡に関する医療事故で実際に出された二つの判決を研究し報告しました。
どちらも、内視鏡による手術中に誤って別の箇所を傷つけたという事件です。
①東京地方裁判所判決(平成13年6月29日)
前立腺肥大症の治療のため内視鏡による前立腺切除手術を受けた原告が、手術の際に医師が外尿道括約筋の一部に6mmの損傷を加えたため尿失禁状態となったとして、1039万6889円の賠償が認められた事案です。
被告は、括約筋に損傷を加えたこと自体は認めていましたが、それが過失によるものであることを否定し、尿失禁状態は括約筋の損傷のために起こったものではなく因果関係がないと主張しました。
裁判所は、括約筋を傷つけると尿失禁の原因となりうることは泌尿器科専門医であれば当然知っていることであるから、内視鏡による手術に当たっては括約筋を不必要に損傷しないように最大限注意すべき義務を負うと述べ、被告の過失を認めました。また、因果関係については、原告の尿失禁状態が腹圧性尿失禁の症状であることや、東大病院の診察で括約筋の損傷が尿失禁の原因と診断のうえ治療をうけたことを指摘し、東大病院での検査結果データを医学文献に照らしながら詳細に分析して、括約筋の損傷が原因であると認めました。
②横浜地方裁判所判決(平成13年7月13日)
内視鏡による腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた原告が、医師の過失によって術中に十二指腸を穿孔されたため胆汁性腹膜炎となり緊急開腹手術をすることになったとして、306万1317円の賠償が認められた事案です。
被告は、最大限の注意を払っても穿孔を避けることができなかったので過失がないと主張しました。
裁判所は、腹腔鏡下胆嚢摘出術中に穿孔が生じた場合には術中に明らかにならず、電気メスによる熱損傷によって数日後に穿孔を起こすこともあり、開腹手術が必要になるうえに創部感染や腸管癒着をおこす場合も多いので、穿孔の可能性があるときには腹腔鏡下で摘出を行わず開腹手術に切り替えなければならない義務があったと認定した上、この件は開腹手術に切り替えなければならない場合ではないとしました。その一方で、穿孔を不可抗力とみることはできないと認定し、過失を認めました。穿孔を避けられない場合には開腹手術にしなければならないため、この件は最大限注意すれば穿孔を避けることが出来たケースであると認定されたことになります。
どちらの事件でも、様々な医療文献を参照しながら医学的な部分を認定しており、患者側弁護士として医療文献の調査の重要性を改めて思いました。
「普通に考えて術中に別の場所を傷つけるとか絶対医療ミスだろう」と思うようなケースでさえ膨大な調査と資料の分析、整理が必要というのが医療過誤訴訟の現状です。
ただでさえ負担の大きい患者にさらにそういった負担を要求するこの現状には正直憤りを感じます。
今後もこうした勉強をしっかりと積み重ね,より一層お役にたてる弁護士となるよう努めてまいります。
⇒医療過誤の相談のご予約はこちらから!
先日、私も所属している医療問題弁護団の集まりがありました。
この弁護団は患者側で医療過誤訴訟をてがける弁護士で構成されています。
今回は弁護団の団員が手がけている事件を今後どう進めていくかという相談や、過去だされた判決の内容を研究しました。
その中で、私も内視鏡に関する医療事故で実際に出された二つの判決を研究し報告しました。
どちらも、内視鏡による手術中に誤って別の箇所を傷つけたという事件です。
①東京地方裁判所判決(平成13年6月29日)
前立腺肥大症の治療のため内視鏡による前立腺切除手術を受けた原告が、手術の際に医師が外尿道括約筋の一部に6mmの損傷を加えたため尿失禁状態となったとして、1039万6889円の賠償が認められた事案です。
被告は、括約筋に損傷を加えたこと自体は認めていましたが、それが過失によるものであることを否定し、尿失禁状態は括約筋の損傷のために起こったものではなく因果関係がないと主張しました。
裁判所は、括約筋を傷つけると尿失禁の原因となりうることは泌尿器科専門医であれば当然知っていることであるから、内視鏡による手術に当たっては括約筋を不必要に損傷しないように最大限注意すべき義務を負うと述べ、被告の過失を認めました。また、因果関係については、原告の尿失禁状態が腹圧性尿失禁の症状であることや、東大病院の診察で括約筋の損傷が尿失禁の原因と診断のうえ治療をうけたことを指摘し、東大病院での検査結果データを医学文献に照らしながら詳細に分析して、括約筋の損傷が原因であると認めました。
②横浜地方裁判所判決(平成13年7月13日)
内視鏡による腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた原告が、医師の過失によって術中に十二指腸を穿孔されたため胆汁性腹膜炎となり緊急開腹手術をすることになったとして、306万1317円の賠償が認められた事案です。
被告は、最大限の注意を払っても穿孔を避けることができなかったので過失がないと主張しました。
裁判所は、腹腔鏡下胆嚢摘出術中に穿孔が生じた場合には術中に明らかにならず、電気メスによる熱損傷によって数日後に穿孔を起こすこともあり、開腹手術が必要になるうえに創部感染や腸管癒着をおこす場合も多いので、穿孔の可能性があるときには腹腔鏡下で摘出を行わず開腹手術に切り替えなければならない義務があったと認定した上、この件は開腹手術に切り替えなければならない場合ではないとしました。その一方で、穿孔を不可抗力とみることはできないと認定し、過失を認めました。穿孔を避けられない場合には開腹手術にしなければならないため、この件は最大限注意すれば穿孔を避けることが出来たケースであると認定されたことになります。
どちらの事件でも、様々な医療文献を参照しながら医学的な部分を認定しており、患者側弁護士として医療文献の調査の重要性を改めて思いました。
「普通に考えて術中に別の場所を傷つけるとか絶対医療ミスだろう」と思うようなケースでさえ膨大な調査と資料の分析、整理が必要というのが医療過誤訴訟の現状です。
ただでさえ負担の大きい患者にさらにそういった負担を要求するこの現状には正直憤りを感じます。
今後もこうした勉強をしっかりと積み重ね,より一層お役にたてる弁護士となるよう努めてまいります。
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投稿者 初雁総合法律事務所