事務所ブログ
2014年2月14日 金曜日
契約書における問題点
東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。
ビジネスにおける契約の重要性は,改めて説明するまでもないものと思います。
ただ,様々なご相談に触れていると,契約書の重要性について,意外と認識されてない方が見受けられるように思います。
そこで,少しさかのぼったところから,契約書の重要性について,考えてみたいと思います。
例えば売買契約であれば,売り手の「いくらで売ります」という意思表示と買い手の「いくらで買います」という意思表示が合致した場合に成立するものとされています。
契約が成立すると,それによって債権が発生します。
これも売買契約で説明すると,買い手には売り手に対する「売買目的物(売り物)を渡せ」と要求する権利が発生し,売り手には買い手に対する「売買代金を支払え」と要求する権利が発生します。
そして,相手方がその要求に応えない場合に,国家権力の力によってそれを実現するのが,裁判手続きと強制執行手続きということになります。
法律上は,契約は契約書がなくても成立することになっています。口頭で合意したことでも,契約が成立するのです。
・「契約書」とは何か
契約書とは,契約を成立させるための意思表示の合致を書面で行ったもの,と考えていただければ結構です。
契約書の記載内容がそのまま契約の内容になります。
すなわち,原則として,契約前の交渉がどうであれ,契約書に書かれてあることが契約の内容になってしまうのです。
ここで原則と言ったのは,「契約書の内容はAだけれども,交渉の過程から考えると,これはお互いBだとして契約したものだ」といった主張が裁判の世界ではよくみられ,その主張が通る場合もあるからです。
では,契約書の内容を確認せずに作成してしまってもいいものでしょうか?
もちろんNOです。
上述の例外が通る場合もあるとはいえ,そのためには裁判ではそれを立証しなければなりません。メールをかき集め,どのメールが使えるかを判断し,担当者や関係者から事情を聞くなどもしたうえで,書面にまとめる必要があります。
その労力たるや膨大なものです。避けなければなりません。
巷にあふれている契約書には,法律的にみると曖昧な定めになっている場合が少なくありません。
我々の世界で特に有名なのが「検収」です。
物を作って納入する,というケースで問題になることが多い項目の筆頭でしょう。
作り手は物を作って納入したのに,買い手はその出来栄えに満足せず,検収を不合格としたり検収しなかったりする場合があります。
契約書を見ると,検収の後に代金を支払う,と書いてあったりするので,検収が終わらない限り代金を請求できません。
では「検収」とはなんでしょうか。
「納入品が発注どおりか検査して受け取ること。品物の種類や数量、破損の有無、機器の動作確認などを行って品物を引き取ること」と辞書にはあります。
ではその「検査」は,どの程度の「検査」でしょうか。パッと見おかしいところはない,というレベルの検査なのでしょうか。発注した通りのものであるか詳細に調べるというレベルの検査なのでしょうか。どの程度詳しく検査してOKなら「検収」したことになるのでしょうか。
人によって答えが異なることが容易に想像できます。お金を払いたくない注文主とお金を払ってもらいたい製造元では,確実に意見が分かれます。
その結果,検収の条件がどうだったか,裁判で争われることになるのです。時にはどのようなものを作るよう依頼したのか,という根本のところから争いになる場合もあります。
この争いを避けるためには,「検収」と短い言葉にせず,たとえば「①発注者は,目的物の引き渡しを受けたときは,速やかに目的物の品質性能について別紙検査項目による検査を行い,目的物が別紙検査項目の条件を満たさないときは,発注者は直ちに製造元に対して書面により通知する。②発注者が引渡しから5営業日以内に前項の通知を発しないときは,検査に合格したものとみなす」といったように定めておく必要があります。
このように定めておくと,製造元は引き渡して5営業日経ったことさえ証明すれば,発注者が検査に不合格したという通知書面を発送したことを証明しない限り,代金の支払いが受けられることになります。
取引でかわされる書面には,「覚書」というものもあります。
「契約書」と「覚書」は違うものでしょうか?
上述したように,契約は口約束でも成立します。意思表示さえ合致していればよいのです。
すると,たとえ文書の標題が「覚書」でも,その内容から意思表示が合致していることが認められれば,その通りの契約が成立したことを認めることが出来ます。
つまり,「契約書」と「覚書」には質的な違いはないということになります。
これを利用して,「契約書」というガッチリ縛るイメージがあるものをさけ,あえて標題を「覚書」とし,書きぶりも平易なものにして心理的なハードルを下げる,ということも,時として考えるべきでしょう。
「契約書」という厳密に縛るイメージを避ける点で,活用していくべきかと思います。
同じ理由で,メールによって意思表示を合致させることも十分有効な方法です。
当事務所では,契約書の作成はもちろん,事業の性質や取引相手との関係に応じて,契約書という形式に捉われず,訴訟を見据えた契約内容,契約方法についてご提案させていただいております。
要は,契約内容が明確になり,証拠も確保でき,お客様の利益がしっかりと守られればそれで良いのです。
ビジネスにおける契約の重要性は,改めて説明するまでもないものと思います。
ただ,様々なご相談に触れていると,契約書の重要性について,意外と認識されてない方が見受けられるように思います。
そこで,少しさかのぼったところから,契約書の重要性について,考えてみたいと思います。
・そもそも「契約」とは
契約とは,意思表示の合致によって成立するものです。例えば売買契約であれば,売り手の「いくらで売ります」という意思表示と買い手の「いくらで買います」という意思表示が合致した場合に成立するものとされています。
契約が成立すると,それによって債権が発生します。
これも売買契約で説明すると,買い手には売り手に対する「売買目的物(売り物)を渡せ」と要求する権利が発生し,売り手には買い手に対する「売買代金を支払え」と要求する権利が発生します。
そして,相手方がその要求に応えない場合に,国家権力の力によってそれを実現するのが,裁判手続きと強制執行手続きということになります。
法律上は,契約は契約書がなくても成立することになっています。口頭で合意したことでも,契約が成立するのです。
・「契約書」とは何か
契約書とは,契約を成立させるための意思表示の合致を書面で行ったもの,と考えていただければ結構です。
契約書の記載内容がそのまま契約の内容になります。
すなわち,原則として,契約前の交渉がどうであれ,契約書に書かれてあることが契約の内容になってしまうのです。
ここで原則と言ったのは,「契約書の内容はAだけれども,交渉の過程から考えると,これはお互いBだとして契約したものだ」といった主張が裁判の世界ではよくみられ,その主張が通る場合もあるからです。
では,契約書の内容を確認せずに作成してしまってもいいものでしょうか?
もちろんNOです。
上述の例外が通る場合もあるとはいえ,そのためには裁判ではそれを立証しなければなりません。メールをかき集め,どのメールが使えるかを判断し,担当者や関係者から事情を聞くなどもしたうえで,書面にまとめる必要があります。
その労力たるや膨大なものです。避けなければなりません。
・契約書の落とし穴
巷にあふれている契約書には,法律的にみると曖昧な定めになっている場合が少なくありません。
我々の世界で特に有名なのが「検収」です。
物を作って納入する,というケースで問題になることが多い項目の筆頭でしょう。
作り手は物を作って納入したのに,買い手はその出来栄えに満足せず,検収を不合格としたり検収しなかったりする場合があります。
契約書を見ると,検収の後に代金を支払う,と書いてあったりするので,検収が終わらない限り代金を請求できません。
では「検収」とはなんでしょうか。
「納入品が発注どおりか検査して受け取ること。品物の種類や数量、破損の有無、機器の動作確認などを行って品物を引き取ること」と辞書にはあります。
ではその「検査」は,どの程度の「検査」でしょうか。パッと見おかしいところはない,というレベルの検査なのでしょうか。発注した通りのものであるか詳細に調べるというレベルの検査なのでしょうか。どの程度詳しく検査してOKなら「検収」したことになるのでしょうか。
人によって答えが異なることが容易に想像できます。お金を払いたくない注文主とお金を払ってもらいたい製造元では,確実に意見が分かれます。
その結果,検収の条件がどうだったか,裁判で争われることになるのです。時にはどのようなものを作るよう依頼したのか,という根本のところから争いになる場合もあります。
この争いを避けるためには,「検収」と短い言葉にせず,たとえば「①発注者は,目的物の引き渡しを受けたときは,速やかに目的物の品質性能について別紙検査項目による検査を行い,目的物が別紙検査項目の条件を満たさないときは,発注者は直ちに製造元に対して書面により通知する。②発注者が引渡しから5営業日以内に前項の通知を発しないときは,検査に合格したものとみなす」といったように定めておく必要があります。
このように定めておくと,製造元は引き渡して5営業日経ったことさえ証明すれば,発注者が検査に不合格したという通知書面を発送したことを証明しない限り,代金の支払いが受けられることになります。
・「契約書」か「覚書」か
取引でかわされる書面には,「覚書」というものもあります。
「契約書」と「覚書」は違うものでしょうか?
上述したように,契約は口約束でも成立します。意思表示さえ合致していればよいのです。
すると,たとえ文書の標題が「覚書」でも,その内容から意思表示が合致していることが認められれば,その通りの契約が成立したことを認めることが出来ます。
つまり,「契約書」と「覚書」には質的な違いはないということになります。
これを利用して,「契約書」というガッチリ縛るイメージがあるものをさけ,あえて標題を「覚書」とし,書きぶりも平易なものにして心理的なハードルを下げる,ということも,時として考えるべきでしょう。
「契約書」という厳密に縛るイメージを避ける点で,活用していくべきかと思います。
同じ理由で,メールによって意思表示を合致させることも十分有効な方法です。
当事務所では,契約書の作成はもちろん,事業の性質や取引相手との関係に応じて,契約書という形式に捉われず,訴訟を見据えた契約内容,契約方法についてご提案させていただいております。
要は,契約内容が明確になり,証拠も確保でき,お客様の利益がしっかりと守られればそれで良いのです。
投稿者 初雁総合法律事務所