事務所ブログ

2014年2月 2日 日曜日

年金分割のお話

東京都文京区で弁護士をしている野口眞寿です。

年金分割。
聞いたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。
離婚の際に会社員なら厚生年金、公務員や私立学校の教職員なら共済年金の報酬比例部分を分割するというものです。

少し前までは,制度上分割の仕組みが整っていなかったので,財産分与の一環として算定されるということもありましたが,平成19年に合意による分割の制度ができ,平成20年からはそれ以降の分に限定はされますが合意なくして分割ができるようになりました。
・年金分割のしくみ
ひとつ,しっかりと把握しておかなければいけないのは,これは「支給額」を分割する仕組みではないということです。
この制度は婚姻期間の間支払われた年金保険料を分割するものです。
結婚している間に支払われた夫の厚生年金保険料を分割割合に応じて妻が支払ったことにする,という仕組みです。ここであえて「夫」から「妻」に移すように書いていますが,専業主夫であった場合などこの逆になる場合もあります。
合意による分割は2分の1が上限とされています。
平成20年4月1日以降については,国民年金の第3号被保険者(会社員や公務員の専業主婦)からの請求によって,2分の1ずつ強制的に分割することができます。

・なぜ分割されるのか
この年金分割は離婚における財産分与の考え方によるものです。
財産分与とは,夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を,離婚する際又は離婚後に分けることです。夫婦共同で稼いで築き上げたもので離婚時に残っているものはきちんと清算しましょうという考えがベースにあります。
夫が厚生年金保険料が支払えるのも,主婦が家庭を支える内助の功あってのものです。すると,結婚している間に支払われた厚生年金保険料も夫婦共同で築き上げたものということになるのです。

・分割の割合について
当事者間で合意ができなかった場合には,裁判所が分割する割合を定めることになります。
その割合は基本的に0.5すなわち2分の1です。これは,年金分割も離婚による財産分与の一環でなされるものであるところ,財産分与においても,夫婦共有財産の形成にかかる寄与度は互いに同等であるとみられているため,年金分割においても同じく互いに同等の寄与があったものとして分割割合が定められます。

例えば,
「年金分割は,被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的機能を有する制度であるから,対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は,特別の事情がない限り,互いに同等とみて,年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ,その趣旨は,夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(いわゆる3号分割)に現れているのであって,そうでない場合であっても,基本的には変わるものではないと解すべきである。
 そして,上記特別の事情については,保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られる」(大阪高裁平成21年 9月 4日決定)という判断が高等裁判所によって示されています。

ここで「著しく不当であるような例外的事情」があるとの判断を得ることは相当ハードルが高いものと思って間違いありません。
「例外的事情」というだけも「世の中の大半のケースは原則通りです」ということが暗に示されているうえに,「著しく不当」という文言までつけられている状態ですから,ニュアンスとしては「世の中のほとんどのケースは原則通り0.5です」と宣言しているようなものです。実際,公開されているほとんどの裁判例は割合を0.5と定めています。
これを認めさせようとするには相当力を入れた立証活動をしなければなりません。

請求する方にはありがたい話です。もっとも,我々は夫と妻どちらの側にもなるので喜んでばかりもいられないところですが...。

投稿者 初雁総合法律事務所

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