事務所ブログ

2014年1月21日 火曜日

財産分与のいろは

東京文京区の弁護士野口眞寿です。
今日は,離婚に伴う財産分与について基本的なことを説明させていただきます。
 

〇財産分与
財産分与とは,夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を,離婚する際又は離婚後に分けることをいいます。
民法768条1項は,「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と定めています。ここでは協議上の離婚と限定されていますが,裁判上の離婚の場合であっても,民法771条によって民法768条が準用されるので,適用があります。日本では離婚は裁判か協議によるしかありませんので,結局,あらゆる離婚の場合で財産分与ができます。

財産分与には,
①清算的財産分与
②扶養的財産分与
③慰謝料的財産分与
の三つがあります。

清算的財産分与は,まさに婚姻中に形成された財産の清算として行われる財産分与です。
扶養的財産分与とは,たとえば配偶者が専業主婦(または主夫)だった場合に,離婚することによって生計が立てられなくなることを防ぐため,行われる財産分与です。
慰謝料的財産分与とは,その名の通り,離婚に伴う慰謝料の支払いを財産分与において考慮して行われる財産分与です。

本来の財産分与はこのうちの清算的財産分与がそれなのですが,財産分与にあたっては家庭裁判所が「一切の事情を考慮」して分与額を決定することが出来る(民法768条3項)ため,扶養的財産分与や,慰謝料的財産分与が認められています。

〇共有財産と特有財産
「夫婦が婚姻中に協力して取得した財産」というのは,「婚姻中に取得した財産」とほぼイコールの関係にあります。
一方のみの働きによって作られたように見える財産でも,夫婦である以上お互いの有形無形の協力があり,それによって財産が作られている,というのが現在の裁判所の考え方です。
これは,片方が専業主婦又は専業主夫の場合でも,共働きの場合でも変わりません。財産分与の対象となる,夫婦が婚姻中に協力して取得した財産のことを,「共有財産」と呼びます。

婚姻前から持っていた財産は,財産分与の対象になりません。また,配偶者が相続によって取得した財産も財産分与の対象になりません。
これは,その財産の形成・取得に他方の配偶者の協力があるとは通常いえないことから,当然の結論です。
これら財産分与の対象とならない財産を「特有財産」といいます。

〇財産分与の基本的な考え方
財産分与は,基本的に
【(離婚時又は別居時の財産-婚姻時の財産)の差額÷2】
という計算によって行われます。

考え方を整理するために,財産が現金しかない夫婦(夫A,妻B)をモデルに説明します。
二人が婚姻するとき,夫Aは財産を持っておらず,妻Bは現金100万円を持っていました。
二人は10年ほど婚姻を継続しましたが,性格の不一致により,離婚することとなりました。
離婚するとき,夫Aは500万円の現金を持っており,妻Bは400万円の現金を持っていました。
このとき,500万円と400万円-100万円=300万円の差額200万円の半額である100万円が,清算的財産分与として夫Aから妻Bに分与されるべき財産となります。

この計算は,妻Bが婚姻前にもっていた100万円で何かを買った場合でも変わりません。

このように,現金のみの場合で考えてみましたが,考え方としては現金以外の財産があった場合でも変わりません。現金以外の財産も金銭に換算して価値を考えることが出来ますから,現在の価額によって財産分与額を算定します。

〇法的手続き
財産分与における裁判所のかかわり方には,二通りあります。
ひとつは,離婚に付随して財産分与が行われる場合です。まだ離婚が成立していない場合にはこちらによることになります。
もう一つは,まさに財産分与のみを話し合い,決める場合です。すでに離婚が成立しているが,財産分与についてはまとまっていない場合にはこちらによることになります。

どちらの場合でも算定方法自体には変わりありません。


投稿者 初雁総合法律事務所

相続相談ガイドに掲載されました
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