事務所ブログ

2014年1月25日 土曜日

退職金の財産分与

東京文京区の弁護士野口眞寿です。

今日は,退職金の財産分与について,説明していきたいと思います。
1.退職金の財産分与対象性
退職金も財産分与の対象になります。
既に支払われている退職金はもちろん,まだ退職しておらず退職金が支払われていない状態であっても,財産分与の対象とされます。

前回説明しましたが,財産分与は,夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を,離婚する際又は離婚後に分けることです。
まだ支払われていない退職金は「取得した財産」にあたらないではないか,と思われるかもしれません。
ここでは「退職金」というものの法的な位置づけがポイントになります。
現在の労働法において,退職金は「賃金の後払い」的な性格をもっています。すなわち,本来毎月支払われるはずだった給与の一部が退職時にまとめて支払われているにすぎないのです。

そのようにして考えると,離婚後に退職し退職金を得た場合,その退職金のなかには婚姻中に協力して取得されるはずだった部分も含まれていることになります。そうした考慮から,退職金もまた財産分与の対象とされるのです。
2.退職金支払いの不確実性の考慮
退職金はまだ支払われていないものですから,実際に支払いを受けることが出来るかどうかは,確実ではありません。
そのことから,
「具体的には、将来、退職金を受給できる蓋然性が高い場合に限り」(平成13年4月10日東京地裁判決)財産分与の対象になるとされています。
この蓋然性の判断は,退職金規定の定めや,勤務先の状況,実際の退職金の支払い状況などの諸事情を総合的に考慮し,判断がなされます。

ではこの蓋然性がある,となった場合に金額についてはどう計算をすべきでしょうか。
これには現在裁判例上3つの考え方があります。

ひとつは,基準時点での退職金額を算定し,計算の基礎とする方法です。
平成24年 6月28日千葉家裁判決がこの方法によっています。

もうひとつは,実際に退職手当が支給された際にその金額をもとに算定することとし,計算式を判決で定める方法です。
「本件の場合において退職手当を財産分与するについては,あらかじめ特定の額を定めるのではなく,実際に支給された退職手当の額(退職手当に係る所得税及び住民税の徴収額を控除した額)を基礎として,退職時までの勤続期間に基づいて定まる割合を乗じて得られる額とすべきである」(平成19年 1月23日大阪高裁判決)

最後の一つは,将来退職した時に得られる退職金額を認定し,婚姻期間と寄与度に応じて金額を定めたうえ,退職時までの中間利息を控除して定める方法です。
「13年後である退職時までの中間利息(法定利率年5パーセント)を複利計算で控除して現在の額に引き直した上、その5割に相当する額を原告に分与すべきである」(平成13年4月10日東京地裁判決)
「中間利息を控除」というのは,将来のA時点で得られるはずの金銭が現在のB時点で支払われた場合,その金銭の運用によって,実際にA時点が到来した時には本来の支給額以上になっているはずであることから,民事法定利率の5%の運用益があるものとしてその利益部分を控除することをいいます。

どういった方法をとるかはケースバイケースというほかありません。
退職金規定の定めや,個々の事案に応じて合理的と考えられる方法が選択され,決定されます。
どの計算方法によるべきなのか,判断し相手や裁判所を説得するためにも,弁護士に相談することをお勧めします。

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投稿者 初雁総合法律事務所

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